medium story

伝えたいこの気持ち






なんとゆうか、すごかった。

全員の動きがぴったりと揃い、とても迫力のある演技。腕を出すタイミングから位置までもが全て揃っている。

こんなに揃えられるようになるまで一体どれ程練習を重ねてきたのだろう。






俺は名字から目が離せなかった。

誰よりも練習しているだけあって名字の動きはとても綺麗だったと、素人なりに思う。

あんな細い腕のどこにそんな力があるんだってくらい、力強く動く腕。

軽やかな脚の動き。

所々に入る技はなんでそんなに脚が開くのか不思議なくらいだった。



1番は名字の笑顔。

作り笑いじゃない満面の笑み。見ているこちらも笑顔になるような、楽しくなるような笑顔だった。












激励会の後の部活はそわそわして集中できなかった。

すごかったと、ちゃんと見ていたと一言伝えたくて、部活が終わった後着替えてすぐ剣道場に向かった。



扉を開ければ片づけをしている何人かの部員。

いつも残ってるから名字もいると思ったが見当たらない。





「先輩、何かご用ですか?」

自分を先輩と呼ぶ様子からして片づけをしているのは1年生なのだろう。

「あー、2年の名字名前ってもう帰っちまったか?」



俺がそう尋ねれば2・3年は激励会の後そのまま練習に入り、今日は少し早く終わりにしたそうだ。



「何か伝言ありますか?」

「いや。自分で言いたいのな!サンキュ」





どうしても自分の口で伝えたかった。






早く会いたい。





柄にもなくそんな風に思った。









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