medium story
蛇に睨まれた蛙さん
cheer‥応援、声援
元気づける、活気づける
「専属チアガール!」
「「お疲れ様でしたー!!」」
部活も終わり体育館のモップ掛け。
7時半の最終下校時刻まであと15分しかない。
みんな雲雀さんにかみ殺されたくないから大急ぎだ。
「名前!!先行くかんね!」
『えっひどいよ待って!』
「あんたどうせ今日鍵当番でしょ」
『あ゛忘れてたー!』
ばいばーい!!なんて手を振りながら友人達は帰って行った。
あたしも後は鍵を閉めて職員室に返しに行くだけだ。下校時刻まで残り5分…!!急げば余裕で間に合うはず。
職員室まで急ぎ足で向かう。
季節はまだ6月。日が暮れるのは大分遅くなったが7時半にもなれば外は暗い。教師もほとんどが帰っているせいで廊下も月明かりしか頼りがない。
正直、怖いから急ぎ足です。
「ちょっと。」
『うわぁー!!』
い、いきなり何!?
後ろに人なんかいたっけ?
え、え…!?
頭はパニック。怖くて後ろも振り向けないので前を向いたまま硬直状態だ。
固まってるあたしに「ちょっと聞こえてるの?」と、不機嫌そうに再度話しかけてきた人物が誰だか分かって更に硬直した。
先程までの恐怖とは違った意味の恐怖。
きっとこの声は風紀委員長の雲雀さんだ。
「………ねぇ」
『………ナンデゴザイマショウカ』
ギギギとゆう効果音が聞こえてきそうなくらい不自然にゆっくり振り返れば、月明かりに照らされたそれはそれは不機嫌な雲雀さん。
「あと3分で最終下校時刻だよ。こんなところで何してるの」
『ぶ、部活で…鍵を返しに』
なんて自信のない声なんだろう。自分で聞いてて嫌になる。
部活中は大きな声だって出せるのに普段は控えめで自分に自信が持てないせいで、ハキハキ話したり人前に立つのさえ苦手だ。
そんなあたしがチアダンス部に所属しているなんて誰も思わないだろう。現にクラスの半分は知らないはずだ。
「こんな遅くまで活動してる文化部はないはずだけど」
ほら。雲雀さんも文化部だと思ってる。
『えっと…その…』
運動部ですと、チア部ですと堂々と言えばいいこの口は雲雀さんの迫力と自信のなさから、うまく機能してくれない。
あぁ、もうっ!!
「ヒバリじゃねーか!こいつチア部なんだよ、見逃してやってくれって」
な?と笑いかけてくれたのは同じクラスの山本くん。野球部のエースでクラスの人気者。ルックスも性格もよくファンクラブなんかもあるほどだ。
思ってもみない助っ人の登場にぽかんとしてしまった。
「そうなの?」と問われれば『あ、はい。これ…体育館の鍵です』と思わず鍵を差し出してしまった。
何やってんだ、バカー!!
雲雀さんに渡してどうする!
しかし雲雀さんは鍵を受け取り「早く帰ってよね。山本武、君もだよ」と言い捨て去って行った。
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