medium story
prologue
『うわぁ〜みてみて!あの雲、おさかなさんみたい!』
「………どれ?」
『あれだよ!あのひよこの雲のとなりの!』
「ひよこの雲もわかんないよ」
『だってきょうちゃんさっきからちゃんと見てないじゃない!』
青い空には真っ白な雲がぷかぷか浮かんでて、ゆっくりのんびりどこかに向かって進んでく。
いったいどこからきてどこに向かっているのか。
『あのおさかなの雲もひよこの雲も、いつか地球をぐるっと回って、また名前たちの上までくるんだよ』
「名前ちゃん、雲は雨になるからなくなるんだよ」
『………そ、そんなことないもん!!あの雲はぜったいぜったいまたここに戻ってくるもん!てっちゃんなんでそんなこと言うの!?』
あの頃のわたしは雲はかわいい形をしたまま地球を回り続けてると思ってたし、雲がゆっくり進んでいるものだと思ってた。
何年もかけてまたここにきたときも、こうして三人で空を見上げながら歩いているものだと思っていたんだ。
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