次の年に帰ってきた男は元気がなかった。なぜかきれいな青い羽をもって、しょんぼりと海を眺めている。…お店は、開いてないみたい。

「なに、どうしたの?その羽は?募金でもしたの?」

「…はぁ」

…ため息つかれた。
どうせ、噂の町の例の女の子のことだろうけど。

「…あ、そうだ。パイナップル、あげる。田舎のばあちゃんがいっぱい送ってくれたから」

「ばあちゃん、牧場でもやってんの?」

「ううん。ばあちゃんちの近所にあるんだって。そこからもらったのをもらって、あげた」

一つ食べたけど、なかなか美味しかった。…牧場なんて、今話題にしないほうがよかったかも。この男は私なんて忘れてパイナップルを見ながら牧場主の女の子を思い出してるに違いないんだから。

「パイナップル、好きだって話したっけ」

「…好きだとは聞いてないけど、もらって嬉しかったって言ってたから喜ぶかなって」

「そ。俺、パイナップル好きなんだよね。おまえなら、バレてもいっかな」

なによ、それ。期待させるだけさせて、私なんか眼中にないくせに。自分に言い聞かせなきゃ、やってられない。まだ、好きなんだから。

「…結婚でもしよっかなあ」

「え!?」

さっきまで私に無関心で青い羽を握り締めていたのに、急に振り返って私の顔を見る。なによ。私に結婚なんて無理だって言いたいの。…無理かもだけどさ。この際お見合いとかでもいいし。

「次にカイが来るまでにはできるかも知れない」

「…へぇ。誰と?宿屋の息子?医者?」

「あの人たち、好きな子いるから無理じゃないかなあ。お見合いするしかないよね、お見合い」

「…あげる」

砂浜におみあい、と書いてカイに見せて笑うと、さっきまで握り締めていた青い羽をくれた。…いらないんだけど。だってこれ、ただの羽でしょ?募金したら赤い羽もらえるけど、そんな感じのじゃないの?

「意味、知らないだろ」

「うん」

「あの町のさ、あの子、結婚したんだよ。そうだよなあ。俺、夏しかいないし。アイツは毎日会えるし。……プロポーズでもしよっかなって思ってたんだけどさ」

「…ふーん」

少し、喜んでる自分が嫌だ。なんて嫌な子なんだろう。好きな人の不幸を喜ぶなんて。

「なあ、一緒にこの町を出ないか」

「…は?」

「この町にも、あの町にも、もういかない。新しい町で、俺と、」

「その、私は牧場主の女の子のかわり?」

ああ、ダメなこと聞いた。カイの顔が、少し険しくなったもの。

「…そうだよな。かわりだよな。ごめん、忘れて」

「やだ」

「え?」

「かわりでも、いいし。カイは知ってたでしょ。私がカイのこと好きって。だから、言ったんでしょ。あの町に行かなきゃ、あの子に会わなきゃ、私を好きになれるかもしれないから、言ったんでしょ。…いいよ、それで。」

「もっと自分を大事にしろよ」

そんなふうに言うくせに、カイは私を抱き締めて言った。結婚しようって。



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カイのハートを真っ赤にしたままカイは町を去って、他の男の子と結婚したら、可哀想だよね。なんだかHMのカイはハート変わるの早いし、さらに可哀想だよね。

パイナップルってあんまり美味しくないよね!


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