夏の間だけこの町にいるこの男は、毎年行く別の町に今年は素敵な女の子がいたとやってきてから同じように繰り返す。何でも、女一人で牧場を経営しているとんでもない女の子らしい。ムシを見せたら嫌がると思いきや全力で喜んで、誕生日には牧場でできたパイナップルをプレゼントしてくれたって。誕生日ねぇ。こっちにいないときに誕生日なんだから、私が祝ったことあるわけがないんだよね。バースデーカードは送るけど。

「おまえ、釣りとかするっけ」

「しないよ釣りなんか。手が臭くなるし。」

「…ほんと、おまえ女の子だよな」

「女の子だもの」

「あの子はさ、牧場やってるからか毎日似たような服着て顔泥だらけにして笑ってんだよね。そんで犬とか見せに来んの。…かっわいーよな」

似たような服なんて着たくないし、泥だらけなんてもっと嫌。犬は見るのは好きだけど、飼いたくはない。臭いから。…この男は、カイは、そういう自分に気をつかわない女の子が好きなのかなあ。変わってるなあ。この町にはそんな子いないし、私はそんなのなりたくない。いつか、その女の子に会いたいからって寒い時期も向こうにいるようになっちゃったらどうしよう。

「カイはさ、汚い女の子がいいの?」

「汚いっていうか、飾り気がないのがいいの。おまえとか他の女の子って、すげぇじゃんなんか」

「…ふーん。別に、人間として当たり前のことを気に掛けてるだけなんだけどね、私は」

「……素直に妬きましたって言えばおまえも可愛いのに」


可愛い女の子になるためにこんなに長いこと努力したのに、そんな子供みたいな子が可愛いって言うなんて、ひどいと思わないのかしら。


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一年目は後半からだけど二年目は冷蔵庫に大量保管してパイナップルを毎日あげ続けて結婚したなあ。
余所の町にだって夏男が好きな子がいただろうに!あのたらしめ!


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