「やあ、ベンチウォーマーくん」

「…なんですか」

私が機嫌よく声を掛けると、速水は睨むように私を見てきた。私より背が大きいはずなのになんだか小さく見える。

「ベンチウォーマーV2!」

「…はぁ」

「速水の得意技がなんだったかもう思い出せなくなるくらい試合出てないよね!部内一の俊足?あれ、走ってたっけ?走った?いつ走った?」

「なんなんですかもう…。俺をバカにしに来たんですか?ずいぶん暇なんですね。そんなに暇なら倉間くんの背をのばす方法を考えてあげたほうが人の役に立てますよ」

「あ、速水背は高いよね!」

いいなあ身長。ちょっとくれ。
笑顔で私が話し掛ければ掛けるほど、速水は顔が死んでいく。私はね、嬉しいんだよね。速水が試合でないの。この前まで生き生きしてなかったからみんな神童の顔しか見てなかったけどさ、最近サッカー部ってなんかいいよねってよく女子が話してんの。試合になんか出てたらもう、ファンがいっぱいだよ。剣城くんとかチョイ悪な感じがいいとかさ。チビだって釣りバカだって、なんかいいよねって言われててさ。でも速水は、ベンチウォーマーだから誰も見てないわけ。

「今日部活でクッキー作るから、出来たら差し入れ行くね」

「神童くんにですか?…早く行かないと、たぶん他の人が…あ、俺が言っとけってことですか?」

「ちがわい!」

「え?じゃあ…霧野くん?まさか、浜野くん?倉間くん?…一年生?三年生?」

何で私がわざわざ話し掛けてんのに自分だって思わないんだろ。他の奴に言ったら絶対俺だわって思うだろ。思わないのかな…。私速水に言われたら絶対自分だ!て思うのに…。

「ベンチウォーマーくんにだよ!」

「…?…あ!一乃くん?青山くん?」

わざと?
まあ、いいやもう。部活のあと持ってって口にむりやり突っ込もう。


------

速水ください


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -