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「リッカ」
「…マモン」
呼び掛けると、リッカは下を向いたまま僕を呼んだ。隣に座ると、やっとリッカは顔を上げた。表情は死んでいたけど、それでも綺麗だった。
リッカはまた僕の髪の毛をぐしゃっと撫でて、それからその手を僕の首元で落ち着かせた。リッカの白い手は少し冷たかった。
「…マモンは私の事、好きでしょう?」
リッカは突然泣きそうな顔で僕に聞いてきた。僕は首に置かれたリッカの手を撫でながら、笑った。
「好きだよ」
「…本当に?」
「僕性格は悪いけど、嘘は言わないよ」
「私の為に死ねるなんて言う?」
「リッカが殺されたらその原因をぐちゃぐちゃにして殺すよ」
「…本当に?」
「本当だよ、疑うの?」
リッカは遂に、泣き出した。ほとんど顔を歪めず、かすかに寄せた眉だけが震えていた。涙を溢した瞼の上で、長い睫毛が瞬きで濡れ、光った。
「もしそれが嘘で…マモンが私の首に手をかけたりしたら、マモンが死ぬまで呪うからね…マモンが泣いたって、許さない」
さっき死んだ男の肩書きが、リッカ専属の執事だった事を思いだした。泣きながらリッカの首を締めたあの男は、リッカに好意を吐いていたのだろうか。もしかしたら男はあの局面で躊躇したのかもしれない。だから殺せなかったし僕に殺されたのかも。
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▽ Dog-ear ??
SCHNEEWITTCHEN