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「いや、とにかく俺は彼女を大切にするタイプって事ー、彼女いないけどねー」
「選り取りみどりなのに」
「俺の好みじゃない子ばっかり、尻軽で人気につられて俺の顔と名前ばっか見てる奴しかいないよ、俺の趣味とか興味ないしー、俺意外と純情だからそういう子嫌ー」
「自分で言うのー?」
「喋り方移ってるよー?」
響はしまったとばかりに口を抑えてクスクス笑う恋を目を細めて睨んだ。
「面白いなナリちゃん、可愛いし」
笑うのを止めた恋は響の方に向けていた体を戻し、視線を窓の外に移した。
反対を向かれた響には恋がどんな表情をしてるかわからなかった。
「俺がヤスだったらよかった」
その言葉の真意を追及する気になれず、響が黙ると丁度タクシーは本城邸前に到着した。
響が降りると恋は反対側から降りて、タクシーを挟んで挨拶をした。
「じゃあねナリちゃん、おやすみー」
恋は何事もなかったかのように普通の笑顔で手を振った。
響は何も言わずにつられた笑顔で手を振り返して自宅の門を抜けて行った。
後ろでタクシーが発進する音が聞こえても振り返らずに早足で玄関に飛び込んだ。
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CINDERELLA STORY