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「今夜だけは、可愛くない弟に感謝する」

会場がしんとして、恋の謎の言葉を飲み込んだ。

灰宮家三男の存在は、誰の頭でも薄い物だった。

恋が何の迷いもない顔をしていたので、会場は戸惑いながらも拍手した。

斜め後ろで聞いていた愛と、階段の端で聞いていた清子だけが眉間に皺を寄せた。

響はきょとんとしていたが、その後マイクから振り返った恋の顔を見て微笑んだ。

そして当事者の舞良はあまりの出来事に、頭がフリーズしていた。

周りにいる人全員が、スピーチ台から降りる双子と響と宗次郎に拍手をしていたが、舞良だけは呆然とそれを見ていた。

恋が舞良に感謝なんて、やっぱりオカシイ。
そもそも舞良に一体何が出来ただろうか。
何も出来ないと嘆いていたのに。

呆然とする舞良は恋と響を見ていた。
そこで響が、30メートルほど先にいる舞良に気が付いた。

響は隣にいる朱里を見て微笑んで舞良に手を振った。

舞良は一瞬迷ったが自分に振っているのだと気付き、手を振り返した。

舞良と響のやり取りを後ろに引っ付いていた恋は気付き、恋も舞良を見たが、目を細めて舌を出した。

そこでようやく舞良は放心していた顔が綻んだ。
ふにゃふにゃの笑顔で手を振る舞良に、響と恋は何か話して笑いながら階段を降りきった。


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Dog-ear ??
CINDERELLA STORY






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