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「食べててもいい?」
「いいよ、もちろん。なかなか食べれなくてごめんね」
空いていたベンチに座り、朱里がケーキを食べるのを舞良は見ていた。
フォークを持つ手、一口サイズに切り分けるフォーク、食べる口…。
あんまり舞良が見るので、朱里は笑顔で恥ずかしいよと言った。
舞良は慌てて視線を自分の足に変えた。
「…メールでは本城さんって言ってたからちょっとびっくりしたな」
話題が響の呼び名に戻った事を舞良は疑問に思った。
呼び始めた理由を説明するべきなのだろうか。
「ナリが名前で呼んでって言ったんだ、だからそう呼んでるんだけど…」
「もしかして…ナリちゃんはあなたが好きなのかな」
朱里の突拍子もない憶測に舞良は一瞬言葉を失った。
それだけはあり得ないのに、たとえ好いてくれていたとしてもそれは飼っている子犬に対する愛のような物なのに。
かわいいー、とか言いながら首輪をする感じ。
何故そんな事を突然思ったのか、舞良にはわからなかった。
「それは絶対にないよ」
「どうしてわかるの?」
「それはだってナリには…」
好きな人とは別の婚約者がいる。
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CINDERELLA STORY