P 135/211
朱里は早口で弁解した。
人混みをかき分ける間も何とか守っていたケーキのお皿を持つ手が微かに震えて、今にも落ちそうだった。
舞良はとりあえずそのケーキのお皿を持って、落ちるのを制止した。
朱里の弁解の中に謝る要素など一つもなく、むしろ舞良を喜ばす為だけに言ったように思えた。
「お断りはしたの、他に一緒に行きたい人がいるって…でも、」
「何があったかは気にしてないよ。俺はずっと一緒に行きたかったから、今一緒に来れたのが俺で凄く…嬉しい」
必死に謝ろうとする朱里に、口出しせずにはいられなくなり、自分が如何に嬉しいかを言ったはいいが最後の一瞬で我に返り、妙な間が空いてしまった。
思わず恥ずかしい本心を言ってしまった。
朱里は気にしておらず、そう言った舞良に笑顔を向けた。
「理由は何であれ、一緒に行きたいって思ってもらえて俺は凄くラッキーだよ」
「…理由?」
「俺が誰なのか、知りたかったんでしょ?」
「…」
朱里は視線を泳がせて黙った。
数秒後に顔を上げると、急に照れた笑顔になった。
一瞬舞良は自分が誰なのか朱里がわかったのかと思ったが、朱里の口から出たのは全く別の話題だった。
←* | top | #→
→ Dog-ear ??
CINDERELLA STORY