火の国“フィアンマータ”は世界屈指の医療大国で、数々の名のある病院が存在していた。
その中でも名医と称えられる医師、ルイ=ロペス・ジェンナーはフィアンマータだけでなく、世界中をまわる天才的外科医だった。天才が故の仕事人間になり多忙な毎日を送るルイはその最愛の息子達、ナイトとルークが産まれる時も立ち会え無かった。



「ナイト!ルーク!走り回らないの!」
「「いやだねー♪」」

1996年、ジェンナー家の双子が五歳になった年の事。
ジェンナー家の母アリマアは薬剤研究医でいつも研究に追われていた。家に研究室造ってから家にはいるが双子の面倒を見るまでが出来ず、イタズラ好きの双子を叱るのは家庭教師の仕事だった。

30分、ジェンナー家の大豪邸を逃げて隠れて爆竹を投下したりで逃亡を謀った双子を、追い回していた家庭教師のアリソンは息切れながら椅子に双子を縛りつけた。

「もー逃がさないわよ…!」
「いや逃げられないし」
「縛る事ないでしょアリソンー!」
「こらルーク!アリソン先生と呼びなさいって言ってるでしょう」
「ルークは僕だよ」
「適当に言わないでよアリソン」
「だから先生って…、もういいわ。今日の授業を始めるわよ」

双子は容姿がそっくりで両親やアリソンでさえ見分けがつかなかった。綺麗なオレンジの髪の毛で、目の色はナイトがオレンジでルークは赤みがかっていた。しかし些細な違いなので、見比べるには役立たなかった。
二人は両親の天才的頭脳を受け継ぎ、五歳にしてアリソンから学んでいる授業は微分積分や遺伝子学や化け学だった。

「答えは1よ」
「「違う」」

双子は声を揃えて否定した。

「分母が虚数なの忘れてるよアリソン」
「χ=−3だよ♪」

椅子に縛られたままの五歳児に答えを正されて、アリソンは苦笑いがでた。縛られたままなので勿論暗算をした子供に計算ミスを指摘された事に恥ずかしいや悔しいなどの感情は最早浮かばない。

正直、馬鹿らしい。

アリソンはそう思っていた。明らかに自分より賢い五歳児に物を教えるなんて、何か間違えてるように思っていた。

アリソンは諦めて双子を釈放した。

「「どうしたの?」」
「終業ベルが聴こえなかった?」

双子は顔を見合わせた。そんなベルは存在しない。

「「病気?」」
「冗談よ、ふふ。今日はおしまいにしましょう、アリマアさんには私から言っておくわ」
「え?どうしたの急に」
「今日は特別です」
「「…何で?」」

アリソンはにっこり微笑んで双子の顔を交互に見た。

「今夜ルイ様が戻られます」
「「!!」」

双子は目を丸々と開いて驚き、すぐに満面の笑みになった。
双子は、父ルイに尊敬と憧れの全てを捧げていた。簡単に言ってしまうとルイが大好きだった。

「3ヶ月ぶりですね、成長した事をお見せしないと」
「「うん!」」

アリソンは嬉しそうに部屋から出ていった双子を微笑んで見つめた。ルイの事になると五歳児らしい反応になる可愛い子達に、イタズラも許してしまおうという気になってしまった。

双子は自分達の部屋にこもって作戦を立てる事にした。額を寄せて楽しそうに話し合う双子は嬉しさに溢れていた。

「いや父さんなら導線に気付いて引っ掛かんないよ」
「じゃあ線を壁がわを通して、箱自体は支柱を造って壁に設置しようよ」
「中に入れるのは小麦粉とペンキ、どっちにする?」
「生卵にしようよ」

ただ、作戦自体はろくな話題ではなかった。
双子は悪い顔でにやりとした。


ジェンナー兄弟の過去



written by ois







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