隼人が朝起きると、いつもは空を飛んでいるはずのファルコン号が壮大な麦畑の畦道を走っていた。何か飛べない程の故障でもあったのかと下に降りると、ミュラー姉弟の姿がなかった。

「二人は買い出しに行きましたよ」

二人の所在を聞くと、レイチェルが答えた。買い出しに行こうとしたリュックが、荷物持ちのはずの隼人が寝ていたのでハワードを連れて行ったらしい。隼人が寝ているとファルコン号が飛んでいる時地上に降りれない為、ファルコン号ごと降りたらしい。

「でもハワードだけで大丈夫だったのか?あいつはやる気もないしリュックが困りそうじゃないか」
「よく考えてみなよ隼人」
「ミュラー姉弟と買い出し用のバイクって組み合わせだよ」
「「一緒に行ったら心臓止まる」」

隼人の質問に双子のルークとナイトが答えた。
ミュラー姉弟、獣族はスピード狂で有名だった。標識など全て無視の狂気的スピードで走り、買い物をしてくるに違いない。そんな二人のバイク、どちらにも誰一人乗りたくはなかった。

バイクは二人乗りが二台あるが、各々が一台ずつ乗って行った。病気なんじゃないかというスピードを笑いながら出して、競争とかしているだろう。想像しただけでGに負けて吐きそうだ。

「なる程…良くわかった…」
「はやとかおいろわるいよ、だいじょーぶ?」
「大丈夫だよサニー、今日も可愛いなあ」
「きゃあ、ありがとお!」

隼人がサニーをでれでれしながら抱き締めてる時、ミュラー姉弟はくしゃみをしていた。

「「ハックショーンッ!!」」

「…心無しか、噂されてる気がするわ…」
「まあ、しょうがないな。罪作りだから、俺のこの…」
「あ、小麦粉安い!」
「最後まで言わせろよ」
「誰も聞いてないわよ、それよりこれ三袋買うから持ってね」
「はあ?何で俺がこんな重いの持たなきゃなんねーんだ」
「あんた、何しに来たのよ」
「走りに」
「ふざけるな」
「イッテぇ!爪!爪刺さってるっつの!」
「運びなさい、分かった?」
「分かったって狂暴な猫め」
「わがままな犬に言われたくないわ」
「狼だって!」
「おんなじでしょ、どっちも頭悪そう」
「全然ちげーよ!頭も悪くねーし!」
「はあ…疲れるわ、やっぱり斗師に来てもらうんだった」
「いや、あいつ荷物持ち誰にしようって姉貴が言ってる時、顔青くして視線避けてたぞ。荷物持ちがそんなに嫌だったのかね、姉貴何にしたんだ」
「何もしてないわよ!この前は嵐が来そうだった早めに帰らなきゃいけなくて、すぐに買い物済ませて帰ったもの」
「早めに帰る時に速めに運転したとか?」
「まさか、時速150キロくらいしかだしてないわよ」
「はあ?そんなノロノロ運転で早めに帰れたのかよ」
「斗師が乗ってたんだから加減したのよ、あんたの後ろじゃ斗師吐いてるわよ」
「じゃあ何だったんだろな、荷物持ちが嫌な理由」
「さあ…。あ、お酒買わなきゃ、あんた何がいい?」
「米」
「何であんたそんな中途半端に渋いの」
「じゃあ姉貴は何がいいんだ」
「ジン」
「姉貴は怖えよ」

バイクで時速150キロ出す事がノロノロだと思っている似た者姉弟は、WINGSの買い出し史上最速で帰って来た。その事が次回の荷物持ちに更なる不安と恐怖を与えたのであった。

ハーレーは限界を知らない



ウィングズの短編で、一番のお気に入りです!ミュラー姉弟大好きです、かわいいなあ。
スピード狂設定愛してます。
written by ois







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