風が木の葉を揺らし、夜は沈黙を保ち、雲は月を隠した。

夜の朽木家。とても広い庭にルキアは一人立っていた。薄い寝間着用の浴衣を着て、風で波打つ池を見つめていた。
月は雲に隠れていて、庭は暗かった。
白哉はそのとき自室へ戻ろうと、縁側を歩いていた。
霊圧で気付いてはいたが、ルキアを庭で見つけた。ただ何をするわけでもないルキアは白哉に背を向けて佇んでいた。
白哉はハタと足を止めた。
今までタブーとしてきたことが起こってしまった。今まで守ると決めた約束を遠回しにしてきたのはそのタブーを犯さない為だというのに。
雲から少し顔を出した月の光が照らし出した後ろ姿は彼女にしか見えなかった。もう触れることも叶わない、愛しい人。
裸足だというのに白哉は縁側を降り、庭を真っ直ぐにルキアの元へ歩いていた。白哉が見ていたのはルキアではない。記憶に残る彼女。
足音に気付き、ルキアは白哉の存在に気付いたが、振り返ることは出来なかった。白哉の両腕がルキアの肩を抱き締めていたからだ。

「…兄…っ」

そこまで言ってルキアは続けることが出来なかった。

「…緋真…」

白哉はルキアの耳元で、あの人の名を口にした。自分はルキアだと思ったが、考えてみれば白哉は緋真に似ているから自分を妹にしたのだと思い出し、何も言わず、ただルキアの肩を抱き締める白哉の腕に触れた。
そして、いつも言っている呼び名ではない名で、ルキアは白哉のささやきに応えた。

「…白哉様…」

月を隠していた雲は雨雲となった。
池の水面を打つ雨が音をたて、庭に立っていた二人の顔を濡らした。
髪や顔を伝って水が落ち、それもやがて沢山の雨音に混じって聞こえなくなった。ルキアは未だに抱いている白哉の腕を疎ましく思うこともなく静かに雨にうたれた。白哉は顔を流れる雨に混ざった悲しみが地に落ちる音を聞いた。とても大きな音をたてたのに、前にいる愛しい人はそれに気付かなかった。
そのことに気付いた白哉は目の前にいる人は彼女ではないと気付いた。しかし抱くことを止めはしなかった。このにわか雨が止むまで離す事は出来なかった。

タブーは本当に愚かで悲しい事だった。


禁忌



中3の時に書きました、多分。恥ずかしいです。でも気に入っていました。書いた事あったんですね、二次。書いた事あったんです、二次。
朽木兄妹、大好きです。朽木夫婦も大好きです可愛くて吐きそうでした、初見は。そして突発的に書きました。多分、確か。

ひどい出来ですが、愛嬌という事で。
written by ois







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