リリーはブランコに乗って幼き時、妹の前でやってみせたように高くこいでふわふわと降りてみせた。凄く軽く柔らかい素材で出来た紫のローブをはためかせ、白くて細い足首を覗かせる素足でみずみずしい草の上に降りた。広げていた両腕を背中で組むとこっちを向いて緑の目を細めて口を開いて笑った。

「上手くいったわ。セブ、あなたもやってみせて」

我輩には出来ない。天使の真似など、出来るはずが無かった。リリーは手を片方だけ前に差し出してこちらに歩いて来た。

「一緒にやったら出来るわよ、ほら手をかして」

手を伸ばした。リリーの手は白い肌をしていて内側はうっすらとピンク色をしていた。きっと肌触りが良くて、握りしめると二人の体温で少し湿るのだろう。その不快感すら愛しく感じるのだろう。
その手に触れる事さえ出来れば。



セブルスは自室の机の前で目覚めた。革張りの黒いくるくる回る椅子の上の背もたれに体重を預け、右手を前に突き出していた。すぐに夢がそうさせたのだと気付いたが、腕はしばらく空中に滞在した。
この手の先にあった手を思い出していた。その先にある微笑んだ顔を思い出していた。あの美しい目は、自分を見つめていた。
手を下ろした先には生徒のレポートが並んでいた。パーキンソンのレポートの下にあるレポートを抜き取って一番上に起き、読んだ。
この子供は憎しみの顔だった。嫌悪だ、憎悪だ。ひたすらに憎かった、あの男の顔だ。
その顔に何故、私を見てくれていたはずの目があるのだろう。何故もっとも汚れた感情を、浮き彫りにさせるような、綺麗過ぎる目があの子供の目なのだろうか。

「エクスペクト・パトローナム」

杖を掴み、すぐそこに呪文を唱えて振った。幼かった頃のリリーがブランコから降りる姿を思い浮かべた。杖先から銀の霧が出てきて、雌鹿の姿を形作った。雌鹿は首をもたげて長いまつ毛をうつ向かせた。動物なのだから表情など分かるはずないのに、夢でリリーが見せた微笑みを雌鹿がして見せた気がした。セブルスは再び手を伸ばした。雌鹿はセブルスの手が触れる前に霧になって消えていった。

またしても掴みそこねたその腕は、震えた。

強く手の平を握るとそれを額に持っていき、顔を隠した。涙が頬を伝って、羊皮紙に落ちた。その羊皮紙の一番上に、憎むべき“ポッター”の字を見た。セブルスは顔を手の平で素早く拭うと、羽ペンをインクに浸し、“D”の文字を大きく記した。

全ての悲しさが夢オチなら



ハリーのレポートがD(ドン底)だったわけは、夢見の悪かったスネイプの八つ当たり。
そんな事を妄想して書きました。
書いてみたかっただけです、版権の二次創作って物を…!意外と普通に書けて、びっくりしました。
もうやりません、多分。

written by ois







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