現国の夏休みの課題が小学生を彷彿とさせる『読書感想文』だったため、初めて学校の図書館に訪れた。四階にある図書館は少子化が原因で使われることのなくなった教室しか周りになく、人気は少なかった。いる生徒も現国が理由のやつばかりで、適当な本を見つけると三分で図書館をあとにしていた。
その中に一人、長テーブルの端に座って分厚い本を読んでいる男子学生に見覚えがあった。知り合いではなかったが、全校生徒が彼を知っていた。窓からの太陽光が彼の腕の包帯を輝かせていた。

「なあ、お前何であんな事したの?」

知り合いでもないけど、タメ口で問うてみた。彼は目を上げてこっちをみた。

「あんな事だなんて大袈裟な事はした覚えがないのに、最近よく知らない人に声をかけられる。」

君は誰、と問われている気がした。

「大袈裟じゃないか。ふーん。」

それを聞くと彼はクスクス笑って本に目を落とした。よく見ると、それは広辞苑だった。訳のわからない趣味だ。

「叔父が好きなんだ、辞書。どこにそんな魅力があるのかと思って最近読んでるんだけど、あまりわからないね。やっぱり変態だ。」
「叔父さんにそんな事言っていいのか。」
「血はつながってないよ。父方の姉さんの旦那だから。」

話がそれた事に気付いた時には、バスの発車時刻が近づいていた。田舎にある学校だから、逃すと次は一時間後だ。これじゃ東京フレンドパークが見れない。

「帰るんでしょ、2Dの上杉君。僕は広辞苑を読み終えるまで毎日ここにいるよ。」
「じゃあな、2Aのグラント君。」

あれだけ有名になったのに図書館に彼がいつもいるなんて知らなかった。もしかして自分以外に彼は見えないのかもしれない。


図書館の座敷童



written by ois







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