「ねえ、」
「なに、4028」
「違うじゃん、ぼくの名前は×××だって言ったでしょ」
「そうだった?じゃあ×××、なに?」
「また忘れたんだ」
「言わなかったか?私の記憶は6日分しかもたないって」
「何回も聞いたよ、6日分っていうのは不思議だねって何回も言った。きみが忘れるのだってもう慣れたよ」
「それで、何の用だい?」
「用がなきゃ呼んじゃいけなかったっけ」
「そんな事はない」
「…」
「…」
「脱獄の話は忘れてないよね?」
「昨日の会話だからね」
「気持ちも変わらない?」
「うん」
「方法をあげる」
「…」
「これで、腕を切って」




穴の大きさは半径5センチくらいの半月型でベッドの反対側にある壁の足元にあった。いつもベッドではなく床に寝転び、4028の独房を見つめていた。もしかしたら違うかもしれないが、今日初めて4028の目を見た。緑の目だった。白い指を伸ばしギザギザした刃物を押して寄越した。

心はこの独房から出ていこう。4028も一緒だから何も怖くは無かった。



4028は×××



written by ois







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テーマ「人外ファンタジー」
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