看守は毎日変わる。同じ看守には多分会った事がない。まあ覚えてないから毎週同じローテーションでも私は知らない訳だ。看守は全員面白味がない。一つ一つの独房に廊下は一つで、風呂と庭とジムにそれぞれがつながっている。囚人一人一人時間が毎日少しづつ与えられ囚人全員でローテーションだ。仲間意識を持たせない為に囚人同士は決して会えない。看守も変わるから話し相手には不足する。孤独さが罪に対する罰な訳だ。一応今日の看守にさよならの挨拶もしとこうかな。
「はじめまして、さよなら」
「はじめましてじゃないだろう」
「そうなんだ、ごめんよ」
「じゃあさよなら」
「…泣くなよ、困るだろ。私はきみを知らないのにさ」
「そうか、まあ気にするな」
「ああ、気にしてないよ」

誰だか知らないけど泣き顔で微笑んでそれから重たい扉を閉めた。施錠の音が異様に広がった。さて、見納めは何にしよう。




今日の看守の名前は綺麗な発音だった。聞き覚えが有るような無いような。私と看守は一言も喋らなかったが庭を一緒に散歩した。ジムでジョギングしてみたら一分で疲れた私を看守は隠れて笑っていた。看守は黒髪で薄い茶色の目をしていた。そういえば私の顔はどんなだっただろう。この刑務所には鏡が無いな。

看守は扉を閉める前に確かに“忘れない”と囁いた。



きみは一体誰だい



written by ois







「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -