004
たった数メートルの距離を恐ろしく時間を掛けて行って戻って来る。
考えはまとまらない。
部屋に戻れば美少年は相変わらず微動だにせず、同じ所に突っ立っていた。
晴子
（…マネキン…？;;;）
美少年
「………」
マネキンならどれほど良かっただろう…。
そんな事を考えながら美少年を見ていると脚が震えていることに気が付いた。
声を掛けようとした途端、美少年は膝から崩れ落ちる。慌てて駆け寄ると美少年は両の腕で顔を隠した。
それは、小さな子供が叩かれるのを必死に拒否するかのように。
異常に怯えている。
どうしていいか分からずに見つめたまま止まっていると美少年の身体が小さく跳ねて今度は慌てたように腰を浮かせた。
次の瞬間、晴子の腕は考えるよりも速く美少年を抱き寄せて強く抱き締めた。
美少年が床を舐めようとしたのだ。
自分が腰を落とした場所に垂れたモノを―
晴子
「っそんなことしないで…しなくていい…っ。ここはあなたが居た場所とは違うの…っ」
自然と口をついて出た言葉。
人形のような美少年が何者かはわからない。
だけど、この美少年がどんな環境に居たのかは理解できた。
そしてもうひとつ。
この美少年には自分自身の意思が無い。
指示をされないと何もしない…まさに"お人形さん"だ。
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