その少年‐006
【神部法律相談所】
アンティーク調のドアを開き中へと入る。中はやたらと鉢植えが置かれ緑が溢れる落ち着いた事務所だった。
ドアに取り付けられた来客を知らせる小さなベルがチリリンと控え目に鳴り、奥から「いらっしゃい」と男が出て来た。
ちょっと長めの栗毛のショートヘアで中性的な顔立ちの若い男。彼が晴男が電話をした相手、弁護士の神部 龍司(かんべ りゅうじ)である。
龍司
「待ってたよ、ハレ君」ニッコリ
晴男
「急にすみません。他に相談できる人いなくて…」
龍司
「構わないよ。さ、どうぞ」
晴男
「お邪魔します。おいで」
ゆうずき
「…?」
応接スペースに通され、とりあえずゆうずきの変装を軽く解いてやり上着を脱がせる。
そこへ飲み物を持って龍司が戻って来た。
気のせいだろうか。龍司は少しだけ顔をひきつらせた。
龍司
「…それで、相談って何かな?まぁ、なんとなく予想はついてるけど」
そう言ってゆうずきを見やる龍司。
ゆうずきはじっと目の前に出されたオレンジジュースを見つめていた。
晴男
「それは"どうぞ"って出されたものだから飲んでもいいんだよ」
晴男が"いいよ"と言ってやっと飲み始めるゆうずき。
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