その少年‐001
じっと見つめる美少年に晴男はある事に気が付く。出会ってから今まで"言葉を発していない"。思い出せば彼はいつも頷くという動作で意思の疎通をしていた。
晴男
「…名前…俺は宮下晴男。お前は…?;;;」ドッドッドッドッ…
美少年
「…」
まさか………;;;
晴男
「…もしかして…しゃべれない、のか…?;;;」
美少年は寝ぼけ眼で晴男をぼんやりと見つめるだけ。
晴男
「…俺の言ってること…わかるか?;;;」
美少年
「………」コクリ…
晴男
「あ、それはわかるんだ…。じゃあ、喋れるか?」
美少年
「………」ウウン…
晴男から視線を外さないで首を横に振る。
言葉は理解出来るが話すことは出来ないらしい…。
晴男
「…あー…自分のこと…は、わかる?;;;」
美少年
「………」
晴男
(…あれ…止まった…;;;)
厭な予感しかしない…。
美少年
「………」ウウン…
美少年は少し考えてから首を横に振った。話せない上に記憶喪失。
最悪の状況。
晴男
「な、名前…名前は?!;;;なんて呼ばれてたとか?!;;;」ドッドッドッドッ
しばらくの無言の後、美少年はゆっくりと頷いた。
《わかる》
晴男
「! マジか…!?良かった…」ホッ
美少年
「………」
晴男
「じゃあ今、紙とペンを」
ぎゅ。
紙とペンを取りに立った晴子を美少年が引き止める。
どこまでも厭な予感しかしない。
このタイミングで引き止めるイコール…。
晴男は自分を落ち着かせながらゆっくりと振り返った。
[ 51/60 ]← | →
し お り を 挟 む