007
絢奈はオッサン達を怒鳴りつけるとお兄さんの膝裏に強烈な蹴りを入れて無理矢理しゃがませた。
そして背中の矢を握り締めると一気に引っこ抜いた。
お兄さん
「!ぐ…っ」
絢奈
「傷はすぐに治るのかもしんないけど痛いでしょ!?」
お兄さん
「…あ、あぁ…痛いな…」ドキドキドキ…
お兄さんは豹変した絢奈に若干怯えている。鬼を恐れるどころか蹴りを入れるわ、怒鳴りつけるわ、痛いでしょとか聞きながら矢を引っこ抜くわ…。
お兄さん
(…人間の娘とは恐ろしいな…)
うぅむと唸っていると肩口に薄布があてられた。絢奈が羽織っていた膝まである長いショールで止血をしている。
お兄さん
「!お前…」
絢奈
「私はこの鬼と一緒に居る!!」
お兄さん
「!」
オッサン
「天女様何を!?」
絢奈
「一方的に異端を悪と決めつける人間よりも、傷の手当てをしてくれたり、他を労れる鬼のほうが良いッ!!」
オッサン達
『!?』
絢奈
「鬼ッ!!」ビシッ
お兄さん
「…な、なんだ」ビク…ッ
絢奈
「私を今すぐ川まで案内しなさいッ!!」
お兄さん
「…わかった」
絢奈
「今度また事情も聞かずにこの鬼を傷つけてみなさい。あんた達の村に天罰を与えてやるわッ!!!行くわよ鬼ッ!!!」
お兄さんは絢奈を再び抱えると酒樽を掴み川へと歩き出した。
一方オッサン達は呆然とその場に立ち尽くした。
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