鬼ノ一:酒呑童子@#008

鬼のお兄さんが歩き始めてからそんなにかからずに木々を抜け川へと着いた。

開けた場所を流れる大きな川と広い河原。

絢奈は水面に近い低く平らな岩へと降ろされ、岩の縁に川面に足を浸けるようにして座らされた。


絢奈
「綺麗な川〜!!きもちいい〜っ!!」ンーッ

お兄さん
「そのまま少し冷やすといい」

絢奈
「ん〜///…って、なにしてるの?」

お兄さん
「酒を冷やしている。中途半端にぬるくなってしまった」

絢奈
「ふ〜ん?」


お兄さんは酒樽を川に浸け、流されないように石で固定するとそのまま川の中へと入って行った。

そして突然水面を片腕で勢い良く掬いだす。


絢奈
「今度はなにしてるの?」

お兄さん
「魚を穫っている。夕餉と肴だ」バッシャンッ

絢奈
「夕餉は魚?」

お兄さん
「?夕餉と肴…あぁ、魚ではなくて"酒の肴"。つまみだ」

絢奈
「!あぁ、なるほど」

お兄さん
「お前は何匹食べる」

絢奈
「え?」

お兄さん
「じきに逢魔が時を迎える。人間の娘を放っておく訳にはいかない」

絢奈
「!?」


お兄さんはゆっくりと絢奈を振り返り、目で「何匹だ」と訴えた。



なんなのこのお兄さん…。


もとい鬼さん…。


なんでこんなに…、


優しいの…?



 

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