鬼ノ一:酒呑童子@#003
絢奈
「あーさっきあなたの足につまづいて転んだのよ」
お兄さん
「それはすまないことをした」
お兄さんは相変わらず無表情のままだが、自分の着ている服を引き裂くとそれにお酒をかけて傷口を拭いてくれた。
それも、想像を裏切る超優しい手つきで。
絢奈
「………」
お兄さん
「…とりあえずはこれでいいがきちんと洗った方がいい。この先に川がある。そこで洗っていくといい」ノソリ…
絢奈
「わ!?」
お兄さん
「なんだ」
絢奈
「背高いねー!?」
お兄さん
「?そうか?」
のそりと立ち上がったお兄さんはプロレスラーですか?というぐらい大きい。
滅多にお目にかかれない身長のお兄さんをじろじろ見ていると、少し屈んで手を差し出してきた。
絢奈
「?なに?」
お兄さん
「川まで案内してやろう。私が怪我をさせたのだからな」
絢奈
「!はぁ…どうも…っ!?」ガクンッ
大きな手につかまって立ち上がろうとすると足首に激しい痛みが走った。
絢奈
「った〜…;;;」
お兄さん
「あぁ、腫れてしまっているな」
絢奈
(見りゃわかるっつの…;;;)
お兄さん
「これでは歩けないな」
絢奈
(立ち上がれないからね…っ!?)
お兄さん
「…痛くないか?」
絢奈
「う、うん;;;」ビックリ…
そうか、と言ってお兄さんは片腕で私を抱え直すと空いた方の腕で酒樽を抱えて歩き出した。
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