015
絢奈
「……どこ行くの?」
お兄さん
「私の知り合いの棲処(すみか)だ」
知り合い?
ということは…。
絢奈
「…鬼?」
お兄さん
「そうだな。お前も知っているかもしれんな」
絢奈
「!有名な鬼なの?」
お兄さん
「有名だな」ウン
やがて景色は木々が鬱蒼と茂る山道から青竹がそよぐ竹林へと変わり、さらにその先へと進むと開けた場所に出た。
小さな庵と澄んだ池―。
想像していた鬼の棲処とは対極の景色に絢奈は言葉を失った。
風が穏やかに吹き抜け、暖かな陽の光は水面をきらきらと輝かせる。
とにかく静かで穏やかで胸の内が不思議と温かになった。
お兄さんは庵の入口まで来ると中に声を掛ける。
???
「何だいこんな朝っぱらから」
中からはぶつぶつと文句を言いながら女が出て来た。
山奥に似つかわしくない艶やかな着物を纏い煙管をくわえた美女。歳は絢奈よりも少し上ぐらいだろうか。垢抜けた姿はやはりどこか人間離れした雰囲気を感じさせる。
???
「…なぁーに?また拾ったの?」
お兄さん
「あぁ。今回はちょっと長くなりそうなんだ」
???
「ふぅん?で、なんでアタシのとこに来るのよ」
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