010

お兄さん
「ここに座っていろ。今火を熾す」

絢奈
「…ありがとう…」

お兄さん
「………」


 黙々と作業をするお兄さん。


 火を熾し、魚を捌き、木の枝に刺して焼く。


 そして、当然のように会話は無く…。


絢奈
「………」キマズイ…;;;

お兄さん
「………」

絢奈
「…あ…」

お兄さん
「………」

絢奈
「お兄さん名前はなんて言うの?」

お兄さん
「…娘は何と言う」

絢奈
「私は久瀬絢奈。あなたは?」

お兄さん
「すごいな。姓が有るのか。私は鬼。それ以外の何者でも無い」

絢奈
「でも名前のある鬼もいるでしょ?悪路王(あくろおう)とか大嶽丸(おおたけまる)とか、それに天邪鬼(あまのじゃく)とか」

お兄さん
「ほう。詳しいのだな」

絢奈
「まぁね〜!私のおじいちゃんが妖怪が好きでその影響なの!」

お兄さん
「奇特な祖父だな」

絢奈
「私も好きよ!私は鬼が好きなの!」

お兄さん
「………」ピクッ

絢奈
「だからあなたが鬼かもって思ったら、なんだか楽しくて」フフ

お兄さん
「…おかしな娘だ」

絢奈
「よく言われる。でもって、お兄さんが私の好きな鬼だともっと嬉しいの」

お兄さん
「好きな鬼?」

絢奈
「"酒呑童子(しゅてんどうじ)"よ。どの記述にもお酒が好きで笛を吹いたり、舞を舞ったり、風流な鬼だったって。最期は人間に騙されて討たれちゃうんだけど…」
 


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