胎動篇ー046
稲荷家
【綾狐専用浴場】
月子
「…」ボーゼン…
綾狐
「?どうした」
月子
「…ここ…姉さまだけの…?」
綾狐
「おう」
月子は脱衣場の入口から中を覗いて立ち止まった。
目の前には全面総檜の浴室と使用者が綾狐だけにしては広過ぎる湯船があった。
浴室の中は檜の香りが湯気と共に漂っている。
ふと、湯船の奥に戸があることに気付く。
まさか…。
月子
「姉さま?」
綾狐
「ン?」
月子
「…あの、奥にある戸は…?」
綾狐
「行ってみるか?」ククク
綾狐は月子の手をとると奥の戸へと近付き、開ける
がらり。
月子は戸の向こうの景色に眩暈がした。
月子
「…;;;」パクパク
綾狐
「俺専用"露天"だ」カッカッカッ
ぐらり。
月子を二度目の眩暈が襲う。
戸の向こう側は、浴室の湯船よりも更に大きな湯船が湯気を漂わせていた。
湯船の奥には国を一望出来る開放感がたっぷり過ぎる景色が広がっている。
松の枝の隙間からは月が覗いていた。
綾狐
「ンー。雪見風呂も良いな。今日はこっちに入ろう」
そういうと綾狐は素早く湯をかけ湯船に浸かる。
綾狐
「月子?ンなとこ突っ立ってっと風邪ひくぞ?」
月子
「…はい;;;」
月子も湯船に浸かる。
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