胎動篇ー036
天納
「…」モグモグ
梅虎
「それから煌黄桜、何故あんな町中に墓所があると思う?」
月子
「え?えーと…」
なんでだろう…?
梅虎
「寂しいだろう?」
月子
「?」
梅虎
「生きている間には家族や友人に囲まれて生活していたのが、死んだ途端に其処から離され、偶に墓参りに人が来るだけ…。寂しいじゃないか」
月子
「…そう、ですね」
梅虎
「だから賑やかな町中に、桜の古木の周りに墓所を造った。誰が誰の家族なんて関係無い、皆家族なんだ。…ま、でも、この考えはちょこっと矛盾するんだけどね」フフ
月子
「矛盾?」
梅虎
「そう。だって煌黄桜の周りに在るのは肉体、魂の器に過ぎないのだからね」
天納
「?…でも」
梅虎
「うん?」
天納
「あの場所にはたくさんの魂の匂いがしたっす」
龍松
「そりゃあオメェあれだよ」
天納
「?」
龍松
「残した家族やら友人やらと何らかの理由で離れられずにいる奴らだよ」
天納
「離れられない?」
龍松
「おうよ。例えばー、子を残して死んじまうとか、想い人と添えないまま死んじまうとか、或いはその逆。残された奴らの想いが強すぎて逝くに逝けない、と」
月子
「…哀しいですね」
梅虎
「そうね。でもその割には漂う魂の数は多くないんだ」
月子
「そうなんですか?」
梅虎
「えぇ」
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