胎動篇ー032

金華
「…」ハァ…


ぎゅ。


銀華
「…もう少し付き合ってね」ギュ

金華
「……ヘイキ」ポツリ

千代
「さ、次は麗清水川に行こう〜!!」

月子
「え?ここ抜けて行くの?;;;」

千歳
「…近道」カクリ

千代
「そ!近道なの!」


そういうと千代と千歳は月子と天納の手を引いて駆け出す。

そうしている内に誰からともなく雪をかけ合いながら笑い出す。

音の無い灰色の空に笑い声が高く高く響き渡っていく。


銀華
「…まったく」フフ

金華
「…」ハァ…


煌黄桜の脇を抜け、家を二、三軒横目で追い越し、再び畦道を歩いていく。


千代
「ほら!あそこが麗清水川だよ!!」


千代が指差す先には水晶の様に煌めく川面が見える。


月子
「わぁっ!!綺麗///」

千代
「でしょ〜?」フフフ

月子
「光ってる///」

千代
「皐月から葉月にかけて川の中で咲くお花があるんだけど、それもとぉーっても綺麗なんだよ!!」

天納
「川の中で花が咲くんすか!?」

千歳
「…梅花藻」

月子
「ばいかも?」

千歳
「…」コクン

銀華
「冷たい澄んだ水の中でしか生えない珍しい花なのよ。若草色の流れの中に白い梅の様な花が咲くの」

天納
「へぇ〜///見てみたいっす☆」

銀華
「夏になったらまたいらっしゃい。皆で待ってるわ」フフ

天納
「ぜぇったい来るっす☆」ニカッ


ま、絶対来れるんすけどね、と誰に言うでもなく呟いた天納の声は川の流れに飲み込まれて消えた。
 

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