冬の夜更けに-005

 隣りで眠る母親を揺り起こす。余程疲れているのかなかなか目を覚まそうとしない。


月子
「お母さん起きて、着いたよ?」

母親
「…」

月子
「起きない…しょうがない。マメ、お願い」


 月子が言いながら頭を撫でると豆太郎は「ぷ」と返事をしてぴょこぴょこと母親へと寄り、其のお腹の上に乗ると全力で穴掘りを始める。意外と兎の穴掘りは衝撃があるのだ。


母親
「…ぅ…ん…?豆太郎…?」

月子
「お母さん、着いたよ」

母親
「あ、ご免なさい…私ったら…。有り難う、豆太郎」


 其れでは、と乗り込んだ時の様に夜莉が気遣いながら花車からふたりを降ろす。冷えた空気に白い息を吐きながら辺りを見渡してみる。


 一面の雪景色が煌々と輝く月に照らされて淡く光っていた。


月子
「…綺麗…///」

夜莉
「私の務めは此にて。此よりは城の者が案内を致します」

月子
「え?」


「ようこそいらっしゃいました。これよりは私たちが案内をいたします」


 明るい声に振り返ると自分よりも年下であろう女の子がふたり立っていた。


月子
「女…の子?」

千代
「私は千代(ちよ)、となりは妹の千歳(ちとせ)です!あなたは?」

月子
「え、あ…月子、です」
 


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