冬の夜更けに-004
ますます判らない。
こんがらがってしまった頭を整理していると月子の懐からもぞもぞと一匹の兎が顔を覗かせた。
夜莉
「おや、可愛らしい御連れ様で御座いますね。ふふ」
月子
「あ!ごめんねマメ;;;苦しかったよね;;;」
夜莉
「夕刻の國まではまだ時間が御座います。彼の雪山迄の道程を参られたのですから、どうぞ楽になさって下さい」
そう言って夜莉は笑む。其の笑顔、優しい声は月子に害意を持たせず、其れどころか今までの緊張やら恐怖やらは緩る緩ると解けて消えて往った。
懐から兎の豆太郎を出してやり夜莉と色々な話をしている内に月子は何時の間にか眠ってしまう―…。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 夢現の中、微睡んでいると名を呼ばれている事に気が付いた。誰だろうかと思案を巡らせると月子は一気に目を覚まして飛び起きた。
月子
「も、申し訳ありませんっ!すぐに朝餉の支度を…っ」
夜莉
「…大丈夫です。此処は貴女様の居られた國では御座いません。もう、大丈夫で御座います」
月子
「…っ…あ、夜莉…さん…?」
夜莉
「はい。さぁ、夕刻の國へ到着しました。御母様も起こして頂けますか?」
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