胎動篇ー019

すらっ。


綾狐
「すまン。待たせたな」

男A
「いや、此方こそ急に押し掛けて申し訳ない」

千代
「!綾狐さま、月ちゃんのお着物…」

月子
「ー…///;;;」クスン…

綾狐
「似合いそうだったからやった。月子は手習いの続きを。千代、見てやってくれ」

千代
「はい」

月子
「あ、でもお着物が…」

綾狐
「気にすンな」カッカッカッ

千代
「あ!月ちゃんお名前の練習をしていたのね」

月子
「ー…///;;;」カァァ

綾狐
「すまンな。では、改めて」

香紗
「…お初にお目にかかります。俺は柳凪香紗(やなぎかしゃ)、隣が従者の天納(てんな)と申します」

綾狐
「俺は稲荷家当主、稲荷綾狐だ。で?」

香紗
「はい。今日来たのは、我が父、柳凪冬狼(とうろう)が先日地獄へと次の務めに参りましたのでお知らせに」

綾狐
「…亡くなったのか」

香紗
「えぇ。柳凪の一族は五十の歳を迎えると次の役目の為、地獄へと逝きます。まぁ正確には彼方で生きているのですが此方に来る事は二度と叶いません」

綾狐
「そうか。弔いは?」

香紗
「"肉体と魂が剥がれる"所謂、死とはまた別物なので弔事は行いません。…ですので報告だけでもと」

綾狐
「ふゥン。しかし残念だな。冬狼殿には親父殿も俺も良くしてもらったからなァ…」フム

千歳
『…失礼します。お茶をお持ちしました』

綾狐
「おう」

天納
「わっ!!桜餅っす☆」

香紗
「天納…」ハァ…

綾狐
「元気だな。その桜餅は美味いぞ?和国(うち)の名物だからな」ククク

月子
「わぁっ///美味しそうっ!!」イタダキマース

綾狐
「…あの童(わっぱ)、てんなと言ったか。忍か?」

香紗
「"天を納める"と書いて天納と読みます。…あれが忍に見えますか?」

綾狐
「ふゥン。見えないな。忍べるのかどうか怪しい」ククク

香紗
「あれは忍に憧れているのですが学ぶ場が荻津には無いので装束だけでもと」

綾狐
「じゃあ里を紹介してやろうか?」

香紗
「…は?」

綾狐
「うちにも忍術修行の必要なのが一人居るからな。一緒にどうだ?」


綾狐の突然の申し出に香紗は一瞬戸惑う。
 

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