胎動篇ー016

綾狐
「"稲荷家"はちょっと訳有りなンだが…」


何処からか細い竹の棒取り出し、説明しながら半紙をなぞっていく。


綾狐
「家族の構成からいくと、長男・銀之丞、長女・銀華、次女・俺、三女・金華、四女・千代、五女・千歳だ。お前年は幾つだ?」

月子
「十八です」

綾狐
「ふむ。ということは、お前は"三女"だな。以下は一つずつ下がる、と」

月子
「三女…」

綾狐
「で、うちの奴らの年は置いといて。次は少し詳しい説明をするぞ」


再び筆を執ると今度は朱墨で前の図に書き足していく。


【稲荷家】
 《当主》長女=綾狐

【駿河(するが)家】
 《当主》長男=銀之丞
     長女=銀華
     次女=金華

【叶栄(かなえ)家】
 《当主》長女=千代
     次女=千歳


月子
「三家でひとつの家族なんですか?」

綾狐
「そう。で、稲荷家の血を引くのは俺で最後で、駿河家は金銀兄妹の母上殿が俺の親父殿の後妻に入ったンだ。金銀兄妹は母上の連れ子だから血は繋がってない。叶栄家はこの国ができた頃から稲荷家に仕えている家系。此処までで聞きたいことは?」

月子
「えっと、大丈夫です」

綾狐
「じゃあ次な」

月子
「あ、やっぱり…でもな〜…」

綾狐
「何だよ」

月子
「やっぱり聞きづらいからいいです…」

綾狐
「親のことか?」

月子
「…ぅ…;;;」


敢えて避けた事をあっさりと言われてしまい思わず口ごもってしまう。
 

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