胎動篇ー010
綾狐居室
【尾花間(すすきのま)】
綾狐
「全くッ!」スパンッ
月子
「あの…ここは?」
綾狐
「あ?俺の部屋だ。銀はまだ来ないだろうから」チョイチョイ
月子
「?」
綾狐
「黒真珠」
月子
「見せていただけるんですかっ!?」
綾狐
「"彼処"に入るのはお前が初めてだよ。俺の秘密の隠し部屋なンだ」クックックッ
月子
「初めて…?」
綾狐
「静かにな」フフ
月子
「…」コクコク
綾狐は部屋の隅の壁に何かを呟きながら人差し指と中指でなぞる。すると中からかたん、と音がして壁が外れた。
月子
「わぁ…」
綾狐
「これは"天狐"の一族に伝わる"血の呪い(まじない)"。俺にしか開けられない入り口なンだ」
月子
(てんこ??)
綾狐
「おいで」
月子
「あ、はい…」
綾狐
「一旦閉めるからな」ペイッ
かぽん。
月子
「Σわっ;;;真っ暗け;;;」
綾狐
「ン。今点けるから」
ぽわ。
月子
「!うわぁ〜…///」
灯りの灯された部屋には多種多様、様々な物が置かれていた。
月子にとってそれらは初めて見る物ばかり、思わず辺りをきょろきょろと見回した。
その中の一つ、壁際に掛けられている一枚の羽織りに目が留まる。
真っ白な羽織り。
色や柄は見当たらないが、影になっている所に目を凝らすと同じ白い糸で刺繍されているのが判る。
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