冬の夜更けに-003

月子
「あの…わたし、夕刻の国なんて国…聞いたことが無いんですけど…」

夜莉
「左様で御座いましたか。夕刻の國とは隠語に御座います。其の実はとある場所に隠された、特別の國の事で御座います」

月子
「特別の国ですか…。あなたは、夜莉さんは、その…何者なんですか?」

夜莉
「私は夕刻の國への案内人で御座います」

月子
「かほさん?は?」

夜莉
「迦穂は夕刻の國の使者に御座います。色々な場所へ旅をしながら夕刻の國を必要とされる方を捜しているのです」

月子
「必要とされる…?わたしとお母さんは必要としていた、ということですか…?」

夜莉
「そう、迦穂が判断したのでしょう。私はあくまで案内役にしか過ぎませぬので…申し訳御座いません。貴女様方の事情は存じ上げておりません」

月子
「そうですか…夕刻の國を必要とする人って…例えば、どんな人なんですか…?」

夜莉
「あらゆる事情により"人の世に居られなくなってしまった"方、と申しましょうか」

月子
「え…?」



"人の世に居られなくなった"…?


それって…。



夜莉
「! あぁ、御心配なされますよう。貴女様は生きておられます」

月子
「? 人の世に居られなくなったって、そういうことじゃないんですか?」キョトン
 


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