胎動篇ー007
稲荷邸
【裏庭】
月子
「あ〜…もうどこをどう通って来たのかわからなくなっちゃった…。わたし覚えられるのかな…;;;」ハァ…
千歳
「…いつもは」
月子
「え?」
千歳
「…いつもならここへ逃げて来た人たちは屋敷を出て仕事に就き、城下で暮らすことになってるの」
月子
「え…」
千歳
「…姉さん…なんであんなこと言ったのかな…」
月子
「…」
千歳
「…ついた」
月子
「え?Σわっ!?このお野菜千歳ちゃんが育てたの!?」
千歳
「…」コクン
目の前には小さいながらも良く手入れのされた畑があった。
千歳
「…豆太郎ちゃんはどれが好き?」
月子
「やっぱりきゃべつかな?小松菜や大根の葉っぱも好きだけど」ンー
千歳
「…じゃああれ…」
千歳は畑に入って行くとしゃがみ込んで実の様な物を二、三個摘んで月子に見せる。
月子
「わぁ!!ちっちゃいきゃべつ!!」
千歳
「…"芽きゃべつ"っていうの。大きなきゃべつより食べやすいと思うの」
月子
「良かったねぇ!豆」
豆太郎は差し出された芽きゃべつの匂いを嗅ぎながら「ぷっ」と鼻を鳴らした。
千歳
「…///」
月子
(…あ、今千歳ちゃん笑った?)
千歳
「…?じゃあ紫陽花に戻ろ」
月子
「うん!」
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