胎動篇ー001

綾狐
「…あ〜…寝みィ〜…」


綾狐(あやこ)は布団の上で胡座をかいて頭を掻く。


綾狐
「…もうちょっと…」モゾモゾ…

銀華
「駄目に決まってるでしょう。起きなさい。綾狐」

綾狐
「何だよ〜…銀華(ぎんか)〜…まだ身体動かねェよ…」

銀華
「千代(ちよ)から一番に連絡があって、昨夜また二人来たそうよ」

綾狐
「…聞いてねェな…」ハァ

銀華
「今朝の朝食はその二人も一緒だから早く起きなさい」

綾狐
「ン〜…」

銀華
「先に台所へ行ってるから」

綾狐
「ン〜…」


また…来たのか…。
今度はどンな奴だろうな…。


綾狐はよっと踏ん張るとやっと立ち上がりよろけながら部屋を後にする。


  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


綾狐
「…寒…水冷たっ…!!!」


ぶちぶちと文句を言いながら井戸で顔を洗っていると「またお寝坊されたのですか」と少女の声が近付いて来た。


綾狐
「ちーよ〜。俺は朝苦手なンだよ。知ってるだろ。で、その二人が新入りかい?」

千代
「はい。こちらが早瀬吉(はやせよし)さま、そしてこちらが娘さんの月子(つきこ)さまです」

綾狐
「ふゥン。…あ、あれ?」ペシペシ

千代
「ふふふ。手拭いはここですよ」

綾狐
「おう。ありがとう。はァ〜、ン?」

月子
「へ、え、あ、え、Σわっ///」

綾狐
「?」

千代
「さ、綾狐さま早く行かないと銀華さまに叱られちゃいますよ?」クスクス

綾狐
「今行くよ」ヘイヘイ


じゃまた後で、と言うと綾狐は台所へと向かった。


千代
「さ、お母さまと月子さまもお支度を。手拭いはこちらに置いておきますね」


「ありがとうございます」

月子
「…///」ハー…

千代
「…」ニヤリ


千代は悪戯っぽく笑うと月子の耳元に顔を寄せて何かを囁いた。


月子
「ーっ!!!?///」

千代
「…」ニヤニヤ


「どうしたの?月子」

月子
「っ何でもないですっ!!///」


「?そう」


きょとんとする吉の横で千代が顔を真っ赤にした月子を愉しげに見つめて笑っていた。
 

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