お前はまたか-004
夕べは真っ暗で分からなかったが、稲荷の屋敷は山肌を這うように、食い込むように建てられていた。迷路の様な廊下も階段が多いのも其のせいだったのだ。
そして広間を出た綾狐と月子は山の中腹、景色の開けた場所にある綾狐の居室に居る。
綾狐居室
【尾花ノ間(すすきのま)】
綾狐
「全くッ!」スパンッ
月子
「あの…ここは?」
綾狐
「あ?俺の部屋だ。銀はまだ来ないだろうから」チョイチョイ
月子
「?」
綾狐
「黒真珠」
月子
「! 見せていただけるんですかっ!?」
綾狐
「彼処に入るのはお前が初めてだよ。俺の秘密の隠し部屋なンだ」クックックッ
月子
「初めて?」
綾狐
「静かにな」フフ
月子
「…っはい///」コクコク
綾狐は部屋の隅の壁を何かを呟きながら人差し指と中指でなぞる。すると中からかたん、と音がして壁が外れた。
月子
「! わぁ…」
綾狐
「これは天狐の一族に伝わる"血の呪い(まじない)"。俺にしか開けられない入り口なンだ」
月子
(てんこ??)
綾狐
「おいで」
月子
「あ、はい…」
綾狐
「一旦閉めるからな」ペイッ
かぽん。
月子
「Σわっ;;;真っ暗け;;;」
綾狐
「ン。今点けるから」
…ぽわ…。
月子
「! うわぁ〜…///」
灯りの灯された部屋には多種多様、様々な物が置かれていた。月子にとってそれらは初めて見る物ばかり、思わず辺りをきょろきょろと見回した。
その中の一つ、壁際に掛けられている一枚の羽織りに目が留まる。
真っ白な羽織り。
色や柄は見当たらないが、影になっている所に目を凝らすと同じ白い糸で刺繍されているのが判る。
[ 147/154 ]← | →
し お り を 挟 む