忘れてた-005
稲荷邸
【裏庭】
千歳に手を引かれぐるぐると屋敷内を走り回った月子は若干目を回している。連れて来られたのは陽当たりの裏庭。
さすが姉妹…;;;
行動が似てる…;;;
月子
「…もうどこをどう通って来たのかわからなくなっちゃった…わたし覚えられるのかなぁ…;;;」ハァ…
千歳
「…いつもは」
月子
「?」
千歳
「…いつもならここへ逃げて来た人たちは屋敷を出て仕事に就き、城下で暮らすことになってるの」
月子
「え…」
千歳
「…姉さん…なんであんなこと言ったのかな…」
《―だって早く家の中を覚えなきゃだもの♪…》
千歳
「…ついた」
月子
「え?Σわっ!?このお野菜千歳ちゃんが育てたの!?」
千歳
「…」コクン
目の前には小さいながらも良く手入れのされた畑があった。
千歳
「…豆太郎ちゃんはどれが好き?」
月子
「やっぱりきゃべつかな?小松菜や大根の葉っぱも好きだけど」ンー
千歳
「…じゃああれ…」
千歳は畑に入って行くとしゃがみ込んで実の様な物を二、三個摘んで月子に見せる。
月子
「わぁ!!ちっちゃいきゃべつ!!」
千歳
「…芽きゃべつっていうの。大きなきゃべつより食べやすいと思うの」
月子
「良かったねぇ。マメ」
豆太郎は差し出された芽きゃべつの匂いを嗅ぎながら「ぷっ」と鼻を鳴らした。
千歳
「…///」
月子
(…あ、今千歳ちゃん笑った?)
千歳
「…? じゃあ紫陽花に戻ろ」
月子
「うん!///」
千歳
「??」
手を繋いで今度はゆっくりと広間へと戻る。
忘れてた_終
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