胎動篇《三》ー015

香紗
「一閃で楽にしてやる」


神倶夜
「…綺麗だな」

貴人
「っ余所見をするな」


びゅっ!


神倶夜
「…そう急くな。まぁ先ずはそなた達の後ろに居るモノを教えて貰おうか」

喜媚
「…何故、言わねばならぬのですか」

神倶夜
「稲荷(うち)の影法師がお前達の力を"異形の力"だと言った。妖精のそなた達には手に入れ得ぬ力よ…のぅ?影法師」クスッ

喜媚
「…!」

貴人
「なっ…!何時の間に!?」


光を遮る物等無い雪上に其れは立っていた。


どんな光をも受け付けぬ深い闇。



異形の影法師―



影法師
「…主等の後ろに居るは、儂と同じ異形。儂が物言わぬ闇ならば其れは"癲狂の光"よ」

喜媚
「…癲狂だと」ピクッ


影法師
「…違わぬであろう…光よ」



???
「…違わない、と言いたいけど。癲狂は嫌だな」クスクス


全員
『!?』


綾狐
「何だ…彼…」

影法師
「…大人しく神界で祀られておれば良いものを。わざわざ苦界にまで出張って来るのだから癲狂であろうが」

???
「非道いなぁ。闇は僕に会いたくない?」

影法師
「…儂が御主に会う時は御主を封印する時だ」

月明かりに照らされる雪上をより一層に輝かせる其れは、異国の白い衣を纏って微笑んでいる。
 

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