胎動篇《三》ー011

綾狐
「…彩祢。"彼"が怖いか?」

彩祢
「……こ…怖いなんてもんじゃないよ…。今にも…あの霊気で潰されそうだよ……」

綾狐
「其の恐怖を忘れるな。其の感情はお前が生きていく上で重要な物だ。生き残りたくば恐怖を忘れるな」ナデナデ

彩祢
「……」


綾狐は震える仔狐の頭を撫でる。


綾狐
「…月子、お師様、天納、纏幻童子、彩祢、舞雪、銀、銀華、金華、千代、千歳は此の地下牢に残って貰う。香紗殿と鬼灯姫は俺と神倶夜と一緒に地上へ出て貰う」

神倶夜
「何だ。綾狐も来るのか?」


程なくして着替えた神倶夜が戻って来た。


綾狐
「当然。俺はまだただの尾裂(おさき)だが当主だ」

月子
「おさき?って何ですか?」

神倶夜
「尾が裂けると書いて尾裂。まんま尾の裂けた狐の事だよ」

月子
「姉さまも尾が裂けているのですか?」

綾狐
「俺はまだ四本しか無いけどな」

神倶夜
「何だ、其の歳でまだ四本しか無いのか」ガッカリ…

綾狐
「悪かったな…」ムスッ

鬼灯姫
「…早くなさい。近付いて来たわよ」

神倶夜
「影法師、避けろ」



影法師?



牢の奥の闇が蠢く。



神倶夜
「じゃあそろそろ行くかな。…牢を出るよ…雅臣(まさおみ)」

月子
「…っ!?」ギク…ッ


牢の戸の脇、小さな座布団の上に置かれた"モノ"を神倶夜は愛おしげに抱き、撫でる。
 

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