胎動篇《三》ー009
綾狐は腰に彩祢を引っ付けた儘、格子に垂れる薄絹を避けて紐で留める。
月子
「…わぁ…」
神倶夜
「初めましてだな」クスッ
神倶夜は気怠げに起き上がると格子越しに集まった面々を見渡す。
其の姿は目を見張る程の美女だった。
透けるような雪肌、絹糸の様な金髪、切れ長の眼に茶褐色の瞳。
何故か死に装束を着ていて、えらくはだけている。
そして―
先端の白い大きな狐の耳と九つに分かれた尾―。
鬼灯姫
「…久しいな。九尾よ」
神倶夜
「おや、閻魔の補佐役ではないか」
綾狐
「神倶夜知り合いなのか」
神倶夜
「大昔の話よ。鬼灯姫と一緒に居るのは白鬼か、珍しいな。其れと陽炎の鬼と烏天狗の仔に野狐と雪女。と、新しい娘だな」
月子
「…」
神倶夜
「?どうした」
綾狐
「月子?」
月子
「…あの…」
神倶夜
「うん?」
月子
「尻尾さわらせてくださいっ!!!////」
神倶夜
「…は?…ははっ!面白い娘だな!」
興奮する月子に全員がっくりと肩を落とす…。
神倶夜
「娘、名は何と」
月子
「月子です///」
神倶夜
「そうか。月子か。もっと良く顔を見せておくれ」
神倶夜は格子に近寄り、両の腕を差し伸べる。
其の手に惹かれる様に月子も格子へと近寄った。
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