胎動篇《三》ー008

香紗
「…!…凄い霊気だな」

天納
「…香くん…」ゾクゾク…ッ

香紗
「何だ、怖いのか?」

天納
「…」

鬼灯姫
「…天納はまだ幼い。此ほどの霊気を放つ妖魔と対峙するのも初めてでしょう」


再び薄絹の向こうから鈴の音の様な声が届く。


神倶夜
「妾(わらわ)が怖いか…天狗の仔よ…」クスクス


千代
「?…彩祢ちゃん?どうしたの?」

彩祢
「…ぅ……」ガクガクッ

舞雪
「彩祢ちゃん?」


座敷牢の在る洞窟の入口、扉の前で彩祢は顔を真っ青にして震えていた。


扉を越えられない。


牢に―



中の"モノ"に近付けない。



???
「…其処の野狐の仔も…何を恐れる。もっと寄れ」

彩祢
「…ぅ…あ…」


綾狐
「神倶夜…。何時までも遊ンでンなよ?」

神倶夜
「つまらん娘だな…お前は。ちょっとからかっただけではないか。…全員今直ぐ近こう寄れ。話が出来ないではないか」


神倶夜の一声に彩祢以外の全員が牢の前に敷かれた畳に上がった。


神倶夜
「…ほう?妾に抗うか、野狐。綾狐、彼を連れて来い。話は其れからだ」


綾狐は溜め息を零すと彩祢に近付き、小脇に抱えて戻って来る。

彩祢は綾狐にしがみついた儘一層震えた。
 

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