胎動篇《三》ー007
千代
「あの!目隠しは…」
綾狐
「俺がやる」
そう言うと綾狐は香紗、天納、鬼灯姫、纏幻童子、威介、彩祢、舞雪の目を順に手で覆っていく。
香紗
「お?霊力が断たれたな。ついでに方向感覚も」
綾狐
「地下の入口は誰であろうと稲荷の家の奴以外には教えられねェのよ。お前ら手を貸してやれ。茶羅、お前は管に戻れ。俺と一緒に居ろ」
畏まりました、と声がした後、障子の隙間から小さな狐がちょろりと顔を出し、綾狐の懐の筒の中へと滑り込んだ。
月子
「姉さま…今のは?」
綾狐
「茶羅、管狐だよ。其れよりおいで月子」
月子
(管狐…今のが…)
ちょっと…かわいいかも…///
綾狐は月子の手をひいて部屋を出る。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
和城、地下―
【座敷牢】
ぼんやりと灯る灯籠。
ひんやりとした洞窟の奥に座敷牢と呼ぶには豪奢な牢屋が在った。
色とりどりの薄絹が垂れる重厚な格子の向こう側に、横たわる人影が見える。
???
「…貴女が新しい娘?」
月子
「…あ…はい」
綺麗な声…。
綾狐
「神倶夜、境界が侵された。茉緒も殺された」
かぐや―…?
この人が―…?
香紗
「…あの…綾狐殿?そろそろ目隠しを…」
綾狐
「あァ、忘れてた。悪ィ。解」パンッ
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