稲荷家の朝-004

 溜め息をつきながら大袈裟に肩を落とす此の男は名を銀之丞(ぎんのじょう)という。銀華の二つ年上の兄で一応綾狐の兄でもある。


銀之丞
「…どうして兄ちゃんの愛は伝わらんのだろうなぁ…」ハァ…

銀華
「…」ピキッ


ごすっ!!!


銀之丞
「Σぐほっ!!|||」

銀華
「…いい加減になさい」


 全く懲りていない銀之丞の鳩尾へ銀華の拳がめり込む。


 …思い切り。


千歳
「…いつもだけど痛そう…」

金華
「…」コクリ


 ちなみに金華は銀華の十一年下の妹で此方も一応綾狐の妹でもある。

 銀之丞、銀華、金華は三人共長い黒髪と黒い瞳で少し釣り目の美男美女兄妹だ。


 銀之丞を沈めた銀華は何事も無かったかの様に朝餉の準備に戻り、金華と千歳も其れに倣(なら)って支度を続けた。



銀之丞
(…金華と千歳ちゃん…最近、銀華に似てきたなぁ…)




主に俺の扱い方とかがさ…。




 綾狐の二度寝阻止から銀之丞の沈没までが稲荷家の朝の光景、日課なのである。




稲荷家の朝_終

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