胎動篇《三》ー006

部屋に居る全員(纏幻童子を除く)が魅入っていた。


部屋中に立ち籠める甘い匂いに頭の芯が痺れ、

妖しく揺れる瞳に目を奪われ、

艶やかな唇から零れ落ち言の葉に心を掴まれ、

悩ましげな所作に身体の自由を奪われる。


其の強烈な色香は他の総てを蹂躙し掌握する―。


綾狐
「…ほぼ全員俺の虜だな」フフン


得意気な綾狐に彩祢は知らぬ間に尊敬の眼差しを向けていた。


彩祢
「…///」キラキラ

月子
「姉さま…すごい…///」ドキドキ

綾狐
「すげェだろ?」カッカッカッ

鬼灯姫
「…流石、飛縁魔(ひのえんま)の子孫ね」

綾狐
「当然」フフン


茶羅
『…綾狐様』

綾狐
「…何か侵入(はい)って来たな」

茶羅
『今茉緒に調べさせております』


境界の守備に戻った筈の茶羅が帰った。


綾狐の顔に緊張の色が滲む。



綾狐
「…直ぐに茉緒を呼び戻せ。管一匹で対応出来る相手じゃねェ」

茶羅
『はい』


月子
「姉さま?」


綾狐の口から燐が漏れ出す。


其の目は獣の其れに変わっていた。


茶羅
『綾狐様…茉緒が…』

綾狐
「…殺られたな。可哀想だが侵入者が離れるまで置いておけ」

全員
『!』

綾狐
「全員今直ぐ地下に移動しろ」


綾狐の言葉に全員がざわざわと移動を始める。
 

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