胎動篇《三》ー003
余裕の香紗と睨む威介―。
月子は静かに威介の腕からすり抜けようとしたが、威介に抱き直され敢えなく失敗に終わる。
しかし少し体勢が変わったことで鬼灯姫と向き合う形になった。
月子
「あ…」
鬼灯姫
「…」
月子
「あの…地獄を離れてはダメなのですか?」
鬼灯姫
「…私達にとっては現世の空気すら清らか過ぎて毒なのよ」
月子
「毒…?」
鬼灯姫
「そう。直ぐには回らないのだけど、やっぱり日に日に弱っていくわ」
月子
「そうなんですか…」
鬼灯姫
「まぁ柳凪の城の中、当主の居室なら地獄と繋がっているから平気なのだけど」
月子
「纏ちゃんもお…おっ?!;;;」
鬼灯姫
「…」
威介が後ろから両手で包み込む様に抱いて小さな子の様に拗ねている。
月子
「お、お師匠さまっ!?///;;;」
威介
「…」ツーン
香紗
「俺が月子ちゃんに手を出すとでも思ってるの?」クスッ
威介
「…」
銀之丞
「お師匠様は昔から"お気に入り"を独り占めする癖がありますよね」クスクス
威介
「!」
銀之丞
「分かり易い」
威介を見て笑う銀之丞を銀華と千代と月子が笑う。
銀之丞
「え?なに?」
銀華
「銀も分かり易いわよ」フフフ
千代
「そしてすごい鈍いです」クスクス
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