胎動篇《二》ー048

鬼灯姫
「何故、此の六ヶ所に鍼を打つと思う?」


突然の問に二人はきょとんとする。


千代
「えっと…氣の流れの急所、とかでしょうか?」

鬼灯姫
「違うわ。とても簡単な事よ。鍼を点にして線で繋いで御覧なさい」

千代
「?」

千歳
「…あ」

鬼灯姫
「判ったかしら?」

千代
「ん〜…;;;」

千歳
「…"籠目(かごめ)"?」

千代
「あ!」

鬼灯姫
「そう、籠目。身体に籠目を施す事で動きを封じるの。後で詳しく教えてあげるわ」

千代
「わぁ///ありがとうございます!」

千歳
「…ありがとうございます」

鬼灯姫
「では始めましょう」


三人は鍼に触れない様慎重に呪布を巻いていく。

身体を巻き終わり、舌を噛まぬ様に呪布で轡を施そうとした


其の時―


鬼の娘
「…ぐぅ゙ぅ゙ぅ゙…っ!」


深紅の双眸(そうぼう)が千代を捉える。


千代
「…!」ビクッ

鬼灯姫
「手を引っ込めなさい。喰い千切られるわよ」

千代
「!?」


千代は慌てて手を引っ込める。


鬼灯姫
「二人共下がりなさい。…完全に鬼に堕ちたわね」

千代
「鬼に堕ちた…?鬼ではないのですか?」

鬼灯姫
「此の娘は人間よ。"鬼堕とし"という邪術を掛けられているのよ」

千代
「人間を鬼に…」


千代は呟くと鬼に堕ちた娘を見詰めながら唇を噛み締めた。
 

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