胎動篇《二》ー039

鬼灯姫
「捕まえた」

天納
「あと二匹だね」

香紗
「?…何を捕まえたんだ?」

綾狐
「…狐だな」


綾狐は視線を逸らさずに呟く。


怨鬼:美葛
「…」

香紗
「狐?」

綾狐
「飯綱」


綾狐が呼ぶと部屋の障子が静かに開き、顔を覗かせた飯綱の横で琉々が呪布で動きを封じた少女を捕まえている。


少女
「…美葛さま…」


美葛は応えない。


鬼灯姫
「飯綱、と言ったわね?」

飯綱
「はい。はじめまして」ニコニコ

鬼灯姫
「其の狐、私が此の怨鬼と共に地獄へ連れて行くわ。決して逃がすんじゃないわよ」

飯綱
「はい。琉々」


琉々は少女を巻いている呪布を締め上げる。

少女は息が詰まり呻き声を漏らす。

其の顔は苦痛に歪んでいた―。


???
「やめてっ!その子を放しなさいっ!」

天納
「おろ?」


雪上に悲痛な叫びが響く。

声の方に顔を向けると一人の少女が涙目になりながら天納の喉元に刃を突きつけていた。


鬼灯姫
「…!」

少女
「その子を放さないならこの人を殺すわっ!」グッ

天納
「…!」


刃先に血が滲む。


と、その時―。

少女の体がふわりと浮かんだ。


少女
「!!」

香紗
「駄目だろ?女の子がそんな物騒な事言っちゃ」

少女
「離して…っ!」


少女は香紗の腕の中で暴れるが、当然香紗の方が力が強くその腕はビクともしない。


天納
「ごめん。油断しちゃった」

鬼灯姫
「…」
 

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