胎動篇《二》ー034
鬼女:美葛
「くっ久住(くずみ)ぃぃぃッ…!」ギリッ
久住
「…美葛様、これ以上愚行を犯すというのであればこの久住、命に代えても鬼神家の為に貴女様を討ちます」
何時の間にか庭に四十位の年の女が立っていた。
鬼女:美葛
「やはりお前が娘を連れ去ったのかぇ」
久住
「私は政宗様の命により、政宗様に暗殺の容疑者として討たれる振りをし、夜影(よえ)様とお世継ぎ様を連れ去りました」
綾狐
「…そして其の夜、政宗はお前と差し違えて、忌むべき村を道連れにお前と心中を図った…」
鬼灯姫
「が、既に怨鬼へと成り果てたこの女は微小の掠り傷のみで生き残った、と」
久住
「はい」
鬼灯姫
「…そなた等の事情は兎も角だ、私と柳凪は悪戯に現世を乱す鬼を祓うが仕事―…」スッ
鬼灯姫が再び赤黒い鈴を取り出す。
すると突然今まで黙って話を聞いていた天納が口を挟む。
―こいつ、鬼以外の妖の臭いがする…。
天納は全くの別人の様な鋭い眼光で美葛を睨み付ける。
美葛はただ冷笑を浮かべて目の前の綾狐を見詰めていた。
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